発酵食の歴史 : 2


《発酵の発見は、火の発見よりも古い》

「人類は火を扱うことができるようになったので爆発的に進化した」と教わったが、実際はそうではない。

その証拠に、肉は、焼いても食べれない。
その証拠に、ためしに野生動物を火で焼いても、硬くなるだけで、とても嚙み切れるものではないからだ。
(現代の肉が焼いても柔らかいのは、家畜化して品種改良したおかげである)

実際、遺跡を発掘しても、「肉を焼いて食べた痕跡」は見つかっておらず、「肉を煮て食べた痕跡」は多く発見されている。

いっぽう発酵は、火を使わなくても可能である。
魚を塩漬けにするだけで干物ができるし、ヤギの乳を革袋に詰めるだけでバターやヨーグルトができるからだ。

《ビールを作るために麦を栽培した》

麦の穂を見てみればわかるとおり、この植物は、食用にするには非常に効率がわるい。
広大な作地面積が必要なわりには、収穫できる種子の総量は非常に少ない。
穂はとても軽く、簡単に風に飛ばされる。
麦のタネは硬い殻に覆われていて、バラすのにとても苦労する。

こんな効率の悪い植物を栽培するぐらいなら、野菜を栽培するか、木の実を収穫するほうがよっぽどラクなはずである。

なのになぜ、必死になって麦を栽培しようとしたのか?

それはつまり、「麦を発酵させるとビールができる」 ということを発見できたからである。
苦労して栽培・収穫するに余りある栄養価が得られるからだ。

つまり、「麦を栽培してそのタネを食べているうちに発酵を発見した」のではなく、
「麦からビールを作る方法を会得したので、麦を栽培することにした」
のである。


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